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2041年に主人公が「笛」と聞いて即座に「マグマ大使」を連想するSF小説『ゲームウォーズ』

 夏コミと並んで、僕の夏休みを充実させてくれたのが、『ゲームウォーズ』上下巻。これは面白かった。

 アメリカの新人SF作家が、昭和時代のビデオゲーム、アニメ、TRPGSF映画、特撮ドラマの断片を、今風の「VR-RPG物(※)」に詰め込んだサイバーパンク小説だ。(※…主人公が仮想現実内のゲーム空間を冒険する物語)

 ゲーム中で中間ステージをクリアした主人公が、「ご褒美に、好きな巨大ロボットをあげよう」と言われて(マジンガーZガンダムもあるのに)「これしかない!」って選ぶのが、レオパルドンという(笑)。そういう妙なノリのアメリカ産オタ小説です。
 

 舞台は2041年。人類の第2の日常と化した仮想現実ゲーム空間「オアシス」の開発者にして、「コンピュータマニアの神」と讃えられた男が死んだ。
 彼の遺言は世界を震撼させた。「数千の惑星からなる、この広大なゲーム空間のどこかに、イースターエッグ(隠しプログラム)を残した。最初にそれを発見した者に、2400億ドルの遺産すべてを譲る……」と。

  手がかりは故人が公開した千ページ超の日記。そこには、80年代サブカルチャーへの愛情がたっぷり綴られていた。ハンター達は悟る。そこに挙げられた作品に精通した者こそが、宝を手にできると。そして、「全人類が、競ってオタク知識を摂取する時代」がやってきた。2041年に。このユニークな未来像が(オタク的に都合が良すぎるので、あまり素直に認めたくないが)快感だった。

 作中で好きな作品が引用されるたび、「ジョン・ブアマン監督の『エクスカリバー』、良いよね!」「分かる分かる!」 と、作者に対する一方的な仲間意識が芽生えて、どんどん引きこまれていった。

 

 主人公も、かなり勉強熱心なオタク青年。探索のヒントである暗号文に「笛」という単語を見つける場面では、即座に「『マグマ大使』を呼ぶ、あの笛を指すとしたら……?」と推理し始める。呆然ですよ。「なんだろう、この思考回路は!?」と、ぽかんとしてしまった。(ちなみに、この推理は外れる)

 主人公が探索する惑星には、懐かしいオタク文化を盛り込んだクエストが待っている。『ウルトラマン』の全エピソードを仮想体験できる「惑星トクサツ」、ビンテージ・ビデオゲームの博物館がある「惑星アーケード」などなど、どこもおもちゃ箱をひっくり返したような世界ばかり。そんな世界に隠された仕掛けを、鮮やかに解いていく時の高揚感がたまらない。

 

 加えて、ネット時代の宝探しであるにも関わらず、主人公が協力プレイを避けて、独力で謎に立ち向かうゲーマーである点にも好感が持てた。僕は「ゲームは自分の力で攻略した方が楽しいはず」と考える古い人間なので……。

 もちろん、MMORPG特有の他プレイヤーとの交流描写もあるし(グッとくる)、ちから押しで探索を進めるハンター軍団(効率厨!)との、宝の争奪戦も熱い。 臨場感あふれる実名ゲームの攻略描写も楽しく、夢のような読書体験だった。

 

  そしてなにより圧倒されたのが、最終決戦。日本の有名キャラクターが入り乱れてのスペクタクルシーンに、頭がクラクラした。『ジャイアントロボ THE ANIMATION 地球が静止する日』以来の衝撃! 

 帯には「映画化決定!」と書いてあるけど、こんなの、本当に映像化できるのだろうか(笑)。常識的に考えて、完全再現は無理では……と思われるので、どうか「映画化するなら、小説は読まなくていいじゃん!」なんて考えずに。オタク向けですが、超面白いので、オススメですよ。

 

【参考】公式サイト「Ready Player One