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『アートたけし展』感想

 北野武の映画は好きだけど、彼の絵画には興味がないので、「もしかしたら映像関係の展示物もあるのかな?」ぐらいの気持ちで観に行った。会場が近かったし。結論から言えば、映画関係の展示はヴェネツィア国際映画祭の金獅子賞、銀獅子賞のトロフィーぐらいだったけど、絵画も意外と面白かった。ちなみに、金獅子はリアルな造形で皮膚がザラザラした像、銀獅子はデザイン化されたツルツルした質感の像だった。

 会場に入ってまず驚いたのは、作品数が膨大なこと。絵画や版画が100点ある。しかも1点1点が大きい。本業を別に持っていて、それなりに多忙であろうに、よくもこんなにたくさん1人で描いたもんだなと。

 絵のタッチは、原色が散りばめられた鮮やかな色彩、影を描かないシンプルな塗り、平面的な構図、頭部が大きいデフォルメなど、小学生が描く絵に似ている。パースが変なものもある。だけど、題材は、歌舞伎やクラシックカーやアフリカの民族衣装など、小学生とは遠い世界から採られていて、間違いなく大人のもの。大人の絵だけど、描き方が大人じゃない。アウトサイダー・アートに近い存在だと思うけど、その手のものに付きものの、病的だったり精神の深い闇を感じさせたり……といった要素とは無縁で、思わず口元がほころぶ明るい絵、笑えるオチが付いている絵が多かった。電化製品をバラバラに分解して、部品をキャンバスに貼り付けただけの作品なども印象に残った。

 また、子供っぽい絵であっても、作者に関する知識があれば、それが無教養から発するものではないことが自ずと理解できるので、安心して「大人でもこういう風に描いてもいいのか」という気持ちになれた。絵に題名が無いのも異質で、いろいろと常識を揺さぶられる感覚が面白かった。

 ただ、絵そのものに独立した価値があるかは不明。作者が何者かを知っていて、その上で楽しむものであろう。

(2017年7月8日@浜松市立美術館)