bono1978の雑記BLOG

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『花束みたいな恋をした』感想

(2021年)監督:土井裕泰 脚本:坂元裕二 主演:菅田将暉有村架純

 周りの評判が良かったので「どんな感じの映画かな?」と興味が湧いて観に行った。サブカルチャーを愛好する男女が、押井守監督の話題で意気投合して、付き合い始める恋愛映画。……ではあるのだけど、僕的には、なんだか恐い部分が印象に残る映画だった。

 主人公のひとり、菅田将暉氏演じる男子大学生は、似た趣味を持つ恋人を得る。しかし、大学を卒業して社会に出るにあたって、その持ち味がお金を稼ぐ役には立たない現実に直面する。そして、自身のかたちを「社会人」に矯正していく過程で、内面をも変質させていき、眼から光は消え、文化への興味を失っていく。その変化は、もしかしたら僕の身にも起こり得たことなのではないかと思って、とても恐ろしく感じた。

 他にも恐い場面はあった。最初、彼が趣味を活かしたイラスト描きの仕事を始めるのだけど、クライアントと単価交渉をした時に、「だったら、いらすとやを使うので結構です」と切り捨てられる場面、これも本当にありそうでゾッとした。あとは、物流関係の会社に就職して仕事が忙しくなると、『パズドラ』しか楽しめない身体になっていく場面も恐ろしい。趣味と仕事のバランスを上手くとれる仕事に就いていれば、また違う人生があったのではなかろうか、と思わずにはいらなれなかった。

(2021年5月1日@TOHOシネマズ浜松)

『みほとけのキセキ ー遠州・三河の寺宝展』感想

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重要文化財の仏像10体を含む寺宝展。遠州三河地方にまたがる地域に焦点を当てた初の展示とのこと。招待券をもらったので観に行ってみた。

まず、今回の展示物を所蔵しているお寺の配置図とその解説が面白かった。東海道沿いに建っていたり、あるいは三河国府から浜名湖北岸の山深いエリア(修行に適している)を通る交通の流れに沿って建っている。当時の交通事情を感じ取ることができた。

また、仏像の展示数は多くはなかったが、平安~鎌倉~南北朝と時代を経るにつれて、仏像の造形にあいまいさが無くなり、細工も緻密になっていくのを実感できた。さすが数百年進んでいるだけある。

展示物の本格的な解説の脇に、興味をひくちょっとした豆知識が書かれており、それも面白かった。千手観音は左右合わせて40本の脇手を持ち、1本の脇手で25の世界を救うから、「40本×25=1000手」という説明を読んで、「そうだったのか!」と納得した。

あと、以前に人体の描き方の本を読んで、頭部から股下:股下から足裏の比率が1:1になることを学んだ。その見方をすると、仏像の一部はこの比率よりも足が短い。でも足元の土台(踏みつけている天の邪鬼など)まで含めると、1:1の比率になっているのだなと見ていて思った。

今回いちばん迫力があったのは、方広寺の「文殊菩薩坐像」(南北朝時代)。大きさは小ぶりだが、飛び抜けた存在感があった。『ニューヨーク美術案内』の彫刻の章を思い出した。まとっている空気が格別な気がした。

「見る者が彫刻の周りにどれだけ深々とした空間を感ずることができるか」これに尽きます。作品が支配する空気の層が分厚ければ分厚いほど、その作品はよくできている。/要するに魚の骨なのです。周りにどれだけ豊かな肉を感じることができるか、これが彫刻の生命です。細部がどうとか、ほとんどどうでもいいことです。このたっぷりした空気の層こそ見るべきものです。(千住博野地秩嘉『ニューヨーク美術案内』)

(2021年4月23日@浜松市美術館)

小田原の街歩きツアー「ティピさんぽ」の感想

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 小田原にあるゲストハウス「Tipy records inn」主催の街歩きツアー「ティピさんぽ」に参加しました。Twitterで偶然に告知を見かけて、小田原の街に興味があったので、宿泊はせずツアーのみ参加。参加費1500円。この宿を3年前から経営しているというコアゼさんの案内を聞きながら、約2時間かけて小田原の市街~海~駅前をぐるりと歩くツアーでした。

 ただ、参加する前には1つだけ心配がありました。僕は一度も「ゲストハウス」に泊まった経験がなく、実体を知らないので、もの凄くエネルギッシュな人達(ヒッチハイカーとかバックパッカーみたいな旅人)が利用する宿泊施設というイメージがありました(※イメージです)。なので「客層的に場違いだったらどうしよう……」と申し込んだ時点では少し恐る恐るという気持ちでした。

 でもそれはまったくの杞憂で、この日の参加者は8名、主な客層は小田原移住を検討中の社会人やファミリーでした。観光地とは一味違うローカルスポットを巡りながら、街の歴史や地理の豆知識も学べる面白い内容。参加者同士が自然と会話する雰囲気もあり、ガイドのコアゼさんもなにかと親切なかたで、あっという間の2時間でした!思い切って参加してみてよかった。小田原の街に興味がある方にはおすすめです。

 <印象に残ったところ>
・目の前で魚をさばいていて、美味しそうな刺し身やフライが並んでいる鮮魚店
・歴史を感じさせる店構えの額縁屋
・駅から徒歩圏内にある、意外と近い海。釣り人がいる荒々しい岩場と、こじんまりとした海水浴場。
・江戸時代創業の古風な佇まいの薬局
・安くて美味しい手作りさつま揚げの「すぎせい」(1枚162円の「いわし」を食べましたが、揚げたてでホカホカでした!)
・昭和31年に廃止された路面電車の展示
小田原城の戦史のかんたんな解説
小田原駅周辺が遠くまで見渡せる、再開発ビル「ミナカ小田原」14階の展望台

(2021年4月2日)

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僕とClubhouse

 最近Clubhouseにはまっていて、主にアニメスタッフのトークを聞いてます。

 新しいもの好きなので、話題になり始めた頃から興味津々でした。ただ、いかんせん、招待してくれる知り合いが居ない!……という状態だったのだけど、2/10にあいうさんに招待して頂き、ついに利用開始。

 中の印象としては、小会場のトークイベントの雰囲気に似てますね。壇上で専門家やサブカルチャーに詳しい人が喋り、話の成り行きによっては客席の著名人が呼ばれてトークに加わるサプライズもある。ただ、違う点は、壇上の人と客席の人が離れた場所に居ること。各自が思い思いの場所からアクセスしながら、そういう一体感のあるトークの場が成立するのが面白いと思いました。あと、ちゃんとしたイベントと違って、誰でも気軽にトークを開始できるのも面白い。

 2/16に水池屋さん達と雑談配信をしてみたら、思った以上に楽しかったので、月1ぐらいで定期的に続けようと思ってます。興味がある方は聞きに来てください。

回顧2020

 2020年の振り返りと、お気に入り作品のまとめ。

 今年観た映像作品のベストは、なんと言っても海外ドラマチェルノブイリ。未曾有の大事故に対応する登場人物たちの振る舞いや、事故現場の禍々しい雰囲気、見慣れないソ連の風景などに引き込まれて一気に観た。吹替も良かったですね。時期的に、不信感がわく日本政府のコロナ対応とチェルノブイリ原子力発電所のまずい事故対応が少し重なって見えて、より普遍的な内容に感じられました。



【アニメ】

・動画配信サービスは、主に「Amazonプライムビデオ」と「dアニメストアチャンネル」を利用中(必要に応じて「Netflix」「dアニメストア」を併用)。

 ・コロナ……アニメの放映スケジュールに影響が出たり、コミケが中止になったりしましたね。コロナと言えば、「Zoom」をインストールして友人達と何度か雑談会をしたのも今年の思い出。あと、地方在住なので東京のイベントが配信でも観られるようになったのは便利でした。

『呪術廻戦』のOPとEDの映像が良かったですね。EDは、輪郭線からはみ出すようにブラシを走らせる色の塗り方で、ブラシの描線がそのまま残像のラインに繋がるのもスタイリッシュ。
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・今年のベストアニメヒロインは特に無し。……と思ったけど、年末に『D4DJ First Mix』第8話を観たらピンクの髪の人(※犬寄しのぶ)が格好よかったので、それで。ぜんぜん気づかなかったけど、声は『Wake Up, Girls!』の人だったのかー。

静岡県立美術館「富野由悠季展」……展示物の数が凄まじかったですね。画面に映るデザインされたものの印象はデザイナーのセンスによるところが大きいと思っていたのだけど、想像以上に監督の修正指示の力も大きかったんだなーと展示を見て分かった。
 メカデザイン案に対する修正指示のコメントで、逸脱したデザインには「ファンの世界観を壊してはいけない」とか、背面を描き込みすぎているデザインには「アニメーターに手を抜く部分を作ってやってください」とか書いてあって、いろんな心遣いが感じられたのも面白かった。
 あと、『逆襲のシャア』で、風景としての宇宙とモニターに表示される宇宙が描き分けられているのが気になっていたのだけど、パイロットの心理に配慮してモニターでは宇宙が明るく表示されるという設定だったらしく、「なるほど!」と思った。

 

【ゲーム】

・活用中のハードは、PS4、Switch、PC。12月からゲーム配信サービス「PS Now」を利用中。スマホゲームは『アークナイツ』を少し触ったけど、面倒に感じてすぐに止めちゃった。

PS4『OuterWilds』……宇宙パイロットとなり、一人乗りロケットで近隣の星を探検して、滅亡した異星人文明の痕跡を追っていくオープンワールドアドベンチャーゲーム。遺跡を巡りながら古代文明に思いを馳せる考古学的な楽しみがある。地球とはスケールの違う自然現象に触れて恐ろしくなる、宇宙ならではの感覚も味わえて夢中になった。


Outer Wilds - Launch Trailer | PS4

PS4『Ancestors: The Humankind Odyssey』……1千万年前のアフリカを舞台に、猿の群れを率いて危険なトラやヘビが徘徊する大地を旅し、人類への進化を体験するオープンワールドのサバイバルアクションゲーム。メインビジュアルを見ても猿一色で「誰向けのゲーム!?」という印象だったけど、『アサシンクリード』シリーズ初期の開発中心人物パトリス・デジーレ氏が10年ぶりに開発した新作として、一部のゲームメディアでは注目されていたようだ。
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 『ダンガンロンパV3』で「優柔不断なサル語を喋ってんじゃねーよ!」というセリフがあったけど、『Ancestors』の猿の世界には言語が無い。だから、誰かから教わることはできず、なにもかも自分で試行錯誤して発見していく必要がある。ゲームの進め方や操作方法に関しても同様で、ほぼ説明が無く、試行錯誤しながら学んでいくことになる。かなり不親切ではあるけど、猿の暮らしを体験する一環のようで楽しかった。「作りかけでリリースされたのでは?」と感じるぐらい作り込みが甘くて、繰り返しプレイしたくなるゲームではないけど、初めて体験する猿の世界がとても面白くて、最後まで投げ出さないぐらいには雰囲気が気に入った。


『Ancestors: The Humankind Odyssey』 プロモーションビデオ

PS4DOOM……「地獄」と繋がってしまった火星の研究施設を舞台に、悪魔の群れに立ち向かっていくFPS。過激なゴア表現が売りのFPSみたいな偏見があって今まで全く興味が無かったけど、「PS Now」でプレイしてみたら、意外と世界観が魅力的だった。爆音のBGMに心臓を高鳴らせながら、段差のあるフィールドを駆け回り、押し寄せる悪魔の軍勢の猛攻にスリルを感じつつ、様々な種類の銃弾を浴びせていく。その高揚感は他のゲームでは味わったことのないものだった。


DOOM | official trailer (2016) E3 2015

 

【音楽】

音楽配信サービスは「Spotify」を継続して利用中。

ピエール瀧氏の逮捕以来、長らく配信停止になっていた電気グルーヴの楽曲が配信再開されたのは今年嬉しかった出来事。

・今年よく聴いた曲
ナナヲアカリ『完全放棄宣言』
ずっと真夜中でいいのに。『お勉強しといてよ』


完全放棄宣言 / ナナヲアカリ


ずっと真夜中でいいのに。『お勉強しといてよ』MV(ZUTOMAYO - STUDY ME)